今度久々に募集をかけますが…その前に自分のスタンスを整理したいので書きます。
「自主映画のスタッフ・キャストさんにギャラを支払うべきかどうか」という、僕ら関係者を常に悩ませる問題があります。
この問題に対する直接的な回答は、結局「公募者と応募者の撮影における関係、社会的立場、参加意欲」の兼ね合わせでケースバイケースで決められていくべきだ、に落ち着きそうですが…。
僕が気にかけているのは、映画の質と絡む部分です。
最近はもう、スタッフ・キャストの募集をネット掲示板でかけることが当たり前になりました。SNSの普及は、それをさらに加速化させていて、連日のように誰かが募集をかけて、誰かが応募しています。
僕が自主映画に最初に絡んだのも、ネット掲示板がきっかけでした。当時はそこまで利用者は多くありませんでしたが…。「ギャラ」や「交通費支払い」、「食費支払い」という文句は今ほど問題にはなっていませんでした。そんなにネット公募で大量の応募があるわけでもなく、あくまで純粋に「身内を増やす」感覚だったのかもしれません。少なくとも駆け出し新人(笑)の僕の場合は、応募者&公募者両方の立場を経験していますが…音楽の仕事を得るためのステップ=経験を踏めるネットワークを作ることが主目的でした。
変遷期がいつだったのかは、僕も知りません。
「ごくわずかながら謝礼を…」を時々見る程度だったのが、今は「交通費・食費付」が圧倒的によく目につきますし、時々「ギャラ日給〜円」も現れました。
学生映画ではまだノーギャラの方が多いですね。
先日は某SNSでも大変話題になっていましたが…製作者側も、折角参加してくださるわけですから、全員に交通費・食費を出して、更にギャラを出したいのです。でも、現実問題、豊富にはない予算をなるだけ機材などの映像資産に回せるならば、そのほうが美しい絵が撮れるのも事実で、葛藤するわけですね。
昔なら公募数も少なかったので、そこまでの思考で終われましたが…。最近は情報の競争率が高いので、「もしギャラを出して(上げて)応募数が増える&演技力の高いひとに来て貰えるなら…」という発想に追い込まれます。
現実、役者さんはフリーターでやってる方多いので、ギャラの出る「仕事」への応募に殺到しています。
さらに最近追い討ちをかけるのが、ある程度大きなグループの「劇場公開」の踊り文句。
ギャラ以上に実績が大事ですから、これは殺し文句ですね(苦笑。例え単館の小さな劇場の深夜上映であっても。
これも公募者の資本力に拠るところ大きくて、『入選して上映』を狙う初心者には辛いものがあります。
そう、資本力のない初心者に、だんだん厳しくなってきていると思うんです。
逆に「お金を出すことで」良質な作品を撮れる可能性が高くなるわけで…当たり前の法則ではあるのですが、それが大きな前提となって自主映画が商業映画っぽい形に変質していくことを懸念しています。
情報化社会は元には戻りませんし、今後も「ギャラ」や「劇場公開」、「著名人が参加」、「販売」を名売った公募は増えると思います。
大切なのは、その中で資本力のない初心者がどう生き残ればいいのか、ということです。
いつの時代もおそらく多くのひとは、ボランティアに寛大です。
そのことが根本から変わることは、よほどの不況に落ち込まない限りないでしょう。ヒトにとっての価値は一元的なものではありませんから。
一番重要なのは、オリジナルな制作コンセプトを打ち出すことだと思います。
「映画祭で受賞を狙う」なんて、今は書いていない案件のほうが少ないです。『MATH 時の落とし子』の公募時期は少なかったですけれどね(笑。
ちなみに『MATH』は‘アーティスト・コラボレーションとしての映画’でした。
企画内容の公開も大切です。
情報漏れが怖い、という理由で一切公開しないひともいますが…^^;
パイロットの公開がベストですが、そういかないので、僕はイメージ曲や画像と筋書きを公開していました。応募者にはネットかメールで脚本を見て頂けるようにして、その返事を待って初めて「応募された」と見なしていました。
それから、忘れがちなのは『自分がどんなことをしてきて、今後何をしたいのか』をまとめて提示すること。
過去の僕自身の経験上、別に受賞実績がなくても、何か共感できるものがあれば応募してくださいます。初心者でも、かけることがあるはずです。好きな映画でも、音楽でも、本でも。「映画監督志望です」なんて、何の情報もありませんよね、この場合。自分をどうやったら知ってもらえるか、いろいろ考える必要があります。自分と一緒に映画を作ることで、どんなメリットがあるのか、見えてくる紹介文に出会うと、応募者ではない僕さえも探りを入れてしまいます(笑。
長々と書きましたが…僕個人は基本的に交通費・食費含めギャラは出しません。
理由は僕が学生であり、同時に上記のような懸念と危機感を持っているからです。この判断にご理解いただける方に応募してほしいと思っています。
当然ながら、作品が何かしらの金銭的評価やビジネスに結びついた場合は、参加者に還元します。結び付けられるように努力します。それ以上の部分は応募者と僕との個人的な話し合いで決定します。
僕の名前(水流ともゆき)で検索すれば、いろいろと過去や現在が分かります。同じ名前で活動しているひとは、今のところいませんし、出てこないと思います(笑。必要に応じて調べてください。未来への方向性も、活動履歴から推察できます。
映像資料、音楽資料、プロフィール、その他多くの情報を公開しています。
募集のコンセプトは、毎度変わりますので一言では言えませんが…。
僕の現場は、「何かをしよう」という漠然とした意思では何の役も回ってきません。スタッフはやることがなくなり、キャストはエキストラにしかなれません。初心者は歓迎ですが、自分の意思をはっきり持っている方を求めています。